このブログを検索

  • 台北暮色('17) 非日常を紡ぎ出した関係の到達点 ホァン・シー - *1 **「修理は初めて?」「ああ」「シャイなのね」「いや、そうでもない」* 台湾の首都・台北(たいぺい)に暮らす3人を中心にした群像劇。 冒頭、中年男のフォンが車がエンストしてしまって、地下鉄に乗る。 *フォン* 別の地下鉄の中で、同じ集合住宅に暮らしているリー少年...
    3 日前
  • ハンセン病差別の底知れぬ地獄 - *【ハンセン病患者が入所する国立療養所、栗生くりう楽らく泉せん園えん(群馬県草津町)に実在した懲罰施設「重監房」は「日本のアウシュビッツ」と呼ばれた施設】* *【国立のハンセン病療養所、多磨全生園内にある「花さき保育園」。2009年の「ハンセン病問題基本法」の施行をきっかけに、2012年、東村山市内か...
    1 週間前

マイブログ リスト

  • - 【*状況論的短言集*】(画像はスピノザ) * 虐めとは、身体暴力という表現様態を一つの可能性として含んだ意志的、継続的な対自我暴力である。 最悪の虐めは、相手の自我の「否定的自己像」に襲いかかり、物語の修復の条件を砕いてしまうことである。その心理的な甚振(いたぶ)りは、対象自我の時間の殺害をもって止めと...
    17 年前
  • 大谷翔平 ―― そのパイオニア魂に限りなし - *史上初の「シーズン50本塁打、50盗塁以上」をマークした大谷は3度目のMVPを受賞した* *同上* *1 想像を絶するプレッシャーを撥ね除けたアスリート* 大谷翔平について書くにあたって、何にも増して驚かされる事件がある。 複数の経歴について疑問を投げかけられている現在、日...
    1 年前

2009年1月9日金曜日

名画短感⑨  ヴェラ・ドレイク('04)


マイク・リー監督


ヴェネチア国際映画祭金獅子賞に輝く、マイク・リーの「ヴェラ・ドレイク」(2004年)について一言。

1950年代のロンドンを舞台にした一人の家政婦の物語だが、人助けの気持ちで堕胎を繰り返す女の「罪と罰」について、いつものように作り手は、顔を見ただけでその出身階級が判断できる、描写の圧倒的なリアリズムによって、これもいつものように、特別なプロット展開の大袈裟な筆致を駆使することなく、あまりにも感動的に描き出してしまった。

とりわけ、イメルダ・スタウントン演じる主人公の信じ難き表現力は群を抜いていて、その「善意なる者」の、恬淡とした振舞いに観る者は落涙するに違いない。

一人の家政婦と、その家族を巻き込んでの人間ドラマの秀逸性については、殆ど非の打ち所がないほどに完璧だった。

いつものように、殆ど予定調和の肯定的な人間ドラマの括り方に、ペシミスティックな私としては、正直、馴染みにくい思いもあるが、それ以上にマイク・リーの演出の力技に、ただ脱帽する限りでである。

そんな秀作への私の感懐は、以下の把握に尽きる。

それは即ち、夫に聖女の如く信頼されるに足る善意さ故に、非合法の危険な行為に手を染めた主人公の無知振りを非難するのは容易だが、しかし本作のテーマが、「善意なる者の無知の所業は、果たして赦されるか」という文脈にはなく、恐らく、「不完全な人間たちが、不完全なままに受容されるべき、あるがままの人間の優しさ」を表現しようとして、それをほぼ完璧に具現したからこそ、「ヴェラ・ドレイク」という名の作品は一代の傑作足り得たということである。そう思った。

(2008年6月)

0 件のコメント: