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ピックアップ(6)
- 聖なる犯罪者('19) 暴力と暴力の狭間に挿入された似非・司祭の「物語」
- 「失敗のリピーター」を止められない日本軍の度し難き生態
- ナチュラルウーマン('17) 今は見えなくても雪の下には花がある
- 彼女が選んだ安楽死~たった独りで生きた誇りとともに~('25) 完璧な準備をしてきたことの自律的な行為の凄さ
- ツォツィ('05) 少しずつ変容する心の旅の物語
- 国宝('25) 悪魔と取引した男の最高到達点
- 南アフリカで起こったこと、その〈現在性〉
- ワン・バトル・アフター・アナザー('25) 「究極の救出劇」という御伽話を捨てた傑作
- 山の郵便配達('99) 「美しきもの」と「善きもの」の紐帯のうちに包摂されていく
- 94歳のゲイ('23) それ以外にない〈性〉を生きていく
- 爆弾 ('25) 自己基準で社会を動かす男
- ルノワール('25) 只者ではない観察者
ピックアップ(5)
- フォーン・ブース('02) 匿名性社会、その闇のテロリズム
- TV特例 敵を知らず己を知らず ―― 精神主義という名の、学ぶことを忘れた日本軍の救い難き欠陥
- ハンセン病差別の底知れぬ地獄
- 658km、陽子の旅('22) 掬い取られた命の、それ以外にない滾り
- あの娘は知らない('22) 小さくも、欠くべからざる旅
- 沖縄狂想曲('23) 「沖縄」とは何か
- 敵('25) 自ら在るべき〈死〉を呼び込み、春を待望する男
- ぼくのお日さま('24) 代替不可能な「自己効力感」を手に入れた少年の物語
- 地の群れ('70) 差別という、重くて深いラインの炸裂
- マリウポリの20日間('23) 善人は善行を尽くし、悪人は悪行に手を染める
- 「抵抗の象徴」・マリウポリの〈現在性〉
- 天国の日々('84) 約束された悲劇の哀しい物語の収斂点
- ハーヴェイ・ミルク('84) 防壁を穿ち、銃弾に斃れた男の魂の斗い
- 冬の旅('85) 「絶対の自由」へ侵入する覚悟
- ふつうの子ども('25) そこだけは逃げてはならない負のスポットで言葉を絞り出す
- カティンの森('07) 乾いた森の虐殺のリアリズム
- フロントライン('25) 未知なる敵と戦う者たちの、人道という名の静かな正義
- ぼくが生きてる、ふたつの世界('24) 青春の余韻が騒いでいる
- 81/2(‘63) 「人生は祭りだ。共に生きよう」
- 熊は、いない(‘22) サイドブレーキを引く映画作家の心意気
- 秘密の森の、その向こう(‘21) 「異床同夢」の時間を漂流する
- 正体(‘24) 二つの英雄譚が溶融し、昇華された映画の面白さ
- 友だちのうちはどこ? (‘87) そこだけは曲げられない少年の正義
- コード・アンノウン(‘00) 人間が分かり合うことの難しさ
- 九十歳。何がめでたい('24) 「世の中に反応すること自体が生きる力」
- 私が棄てた女('69) 社会の底層で必死にもがいて生きる
- ガザという地獄
- ドラマ特例 八月の声を運ぶ男 語り継ぐことの大切さ
- オッペンハイマー('23) 「我々は破壊した」
- ピアニスト('01) 「強いられて、仮構された〈生〉と〈性〉」への苛烈極まる破壊力
- CURE('97) 最強の伝道師
- 愛を乞うひと('98) 虐待サバイバーからの生還者
- ミッシング('24) 困難な状況を乗り越えていく「保護因子」の大きさ
- シビル・ウォー アメリカ最後の日('24) アメリカ分断社会の末路
- 青幻記 遠い日の母は美しく('73) その旅 ―― グリーフワークの帰着点
- 最後の乗客('23) 〈生〉と〈死〉の際どい淵に立たされ、魂が虚空に彷徨う
- 月('23) 武装可能なゾーンを広げ、虚実の境界を破壊していく
- 侍タイムスリッパー('24) 「今という時代」に適応し、精一杯生きていく
- PERFECT DAYS('23) 「全力で築き上げる平凡さ」
- 反撥(‘64) 「約束された狂気」のルーツに潜む性的虐待という破壊力
- 袋小路('66) 「ふんわりとした日常」の、あまりに脆い裸形の相貌性
- あんのこと('24) 絶対孤独という地獄の淵で
- スケアクロウ('73) 物語のリアリズムの、一本の重くて苛烈なライン
- 西瓜を盗んだだけで首を吊るされた黒人たちの闘いの歴史
- 水の中のナイフ('62) 虚栄の心理学
- 226('89) 狂い、馬鹿になり、奔騰せんとす
- 台風クラブ('85) 「閉鎖系の空間」を「解放系の空間」に変容せしめた「思春期爆発」の決定力
- ゴジラ-1.0('23) 「戦争を終わらせる」という決意と覚悟
- 関心領域('23) 無関心という悪
- トキワ荘の青春 時流に媚びない男の漫画道
- かくしごと('24) それでも止められない疑似家族という脆さ
- トニー滝谷('04) 初めて愛を知り、その愛を失うことの怖さ
- 碁盤斬り('24) 絶対正義を埋めゆく男の旅路
- 世界は今、より難しい方向に、途轍もない速度で変動している
- 東京兄妹('95) 小さな街の小さな物語の大きな決断
- 大谷翔平 ―― そのパイオニア魂に限りなし
- 東京夜曲('97) 大人の恋の複雑な心理の綾を精緻に描いた秀作
ピックアップ(4)
- フルメタル・ジャケット('87) 「戦争における『人殺し』の心理学」についての映像的検証
- 夜明けのすべて('24) 夜明け前の暗さを乗り越えていく
- 母という名の女('17) 欲望の稜線を広げた成り行きの果て
- この森で、天使はバスを降りた('96) 究極なる「特別な出来事」が完遂する
- 或る終焉('15) 常世の闇の世界に掠われて
- メタモルフォーゼの縁側('22) 「完璧な一日」へのはじめの一歩
- 市子('23) 「手に負えない何者か」と化していく
- ほかげ('23) 戦争後遺症という疲労破壊が押し寄せてくる
- 家の鍵('04) 涕泣と受容、その時間の旅の重さ
- コット、はじまりの夏('22) 勇を鼓して駆け走る少女
- ナポリの隣人('17) 「擬似家族」という幻想の行方
- ひろしま('53) 怒りを力に変え、その惨状を描き切った唯一無二の幻の名画【本稿は、原爆の熱線などによる凄惨な被爆画像を加えて再投稿しました】(2024年8月6日)
- ウェンディ&ルーシー('08) 小さな町の、小さな旅の、小さな罪の、大きな別れ
- 人はどのように男になり、女になっていくのか
- the son/息子('23) 無知と恥は痛みを引き起こす
- だれのものでもないチェレ('76) 母の迎えを待つナラティブが壊れゆく
- 怪物('23) 抑圧と飛翔 是枝裕和
- Winny('22) 出る杭は打たれる文化の脆さ
- コンパートメントNo.6('21) 出会いはいつも唐突にやってくる
- キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩('21) 誰にも奪えない少女のイノセンス
- 君は行く先を知らない('21) 悲痛な叫びが夜の闇を切り裂いた
- 希望のかなた('17) 並外れて優しき者たちの利他的行為の結束力
- 縞模様のパジャマの少年('08) 友情を繋ぐ冒険の危うい行方
- 波紋('23) 狂わなければ〈生〉を繋げない女の突破力
- 福田村事件('23) 則るべき道理が壊れゆく
- 僕たちは希望という名の列車に乗った('18) 自ら考え、行動し、飛翔する若者たち
- ソフト/クワイエット('22) レッドラインを越えていく女たち
- ニトラム/NITRAM('21) 「自分が何者であるのか」という問いを立てる力
- ゲット・アウト('17) 社会派スリラーの傑作
- 戦場のメリークリスマス('07) 「神秘的で聖なる何ものか」に平伏す男の脆さ
- キサラギ('07) エンタメ純度満点の密室劇
- もし私が死ななければならないのなら あなたは生きなければならない ガザの詩人が遺した命の歌
- にごりえ('53) 女に我慢を強いる貧困のリアリズム
- 樋口一葉の世界 ―― 赤貧地獄の只中を駆け走った「奇跡の14ヶ月」
- ドラマ特例 ながらえば('85) 不器用なる〈心の旅〉が開かれていく
- ウクライナ 2024
- せかいのおきく('23) 投げ入れる女と受け止める男
- ドラマ特例 今朝の秋('87) 善意の集合がラインを成した物語の、迸る情緒の束
- 夜明けまでバス停で('22) 「道徳的正しさ」で闘った女の一気の変容
- she said/シー・セッド その名を暴け('22) 使命感という闘いの心理学
- 評議('06) 人が人を裁くことの重さ
- LOVE LIFE('22) 幻想崩壊から踏み出す一歩
- エゴイスト('23) そこだけは輝きを放つ〈愛〉のある風景
- アマンダと僕('18) それでも、人間は動く
- ロストケア('23) トラウマを克服する歪んだ航跡
- 銀河鉄道の父('23) 魂の呻きを捩じ伏せて、なお捩じ伏せて、這い出して、熱量を噴き上げていく
ピックアップ(3)
- 橋のない川 第二部('70) 闘い切った映画作家の本領の眩さ
- 橋のない川('69) 沸点に達した少年が状況を支配し、新たな情景を拓いていく
- 「全世界に同情されながら滅亡するよりも、全世界を敵に回して戦ってでも生き残る」 ―― 「イスラエル」とは何か
- ケイコ 目を澄ませて('22) 魂を込めたボクシング人生を再駆動していく
- オフサイド・ガールズ('06) 「都会の女たち」の熱気は、地方から出て来た兵士の男を圧倒する
- 生きる('52) 黒澤ヒューマニズムの真骨頂
- わが青春に悔いなし('46) 顧みて悔いのない生活
- ラーゲリより愛を込めて('22) 「堂々たる凡人」 ―― その生きざま
- どん底('57) 黒澤リアリズムの到達点
- 「戦うのは自分たちの土地を守るためです。敵への攻撃が目的になってはいけません。それが人の命に対する責任です」
- PLAN 75 ('22) 復元し、明日に向かって西陽を遠望する
- 蜘蛛巣城('57) 完璧な俳優陣による完璧な構成と完璧な構築力
- 生きものの記録('55) 「神武景気」の只中で堂々と世に放たれたエンタメ排除の反核映画
- 八月の狂詩曲('91) 「戦時の悲劇」と「牧歌的な平和」が架橋する
- 土喰らう十二ヵ月('22) 「今日」という一日を丁寧に生きていく
- ひろしま('53) 怒りを力に変え、その惨状を描き切った唯一無二の幻の名画
- ある男('22) 束の間の至福を経て昇天する男が物語を揺動させていく
- ルーム('15) 「途轍もない特異性」が抱え込む破壊力が溶けていく
- 千夜、一夜('22) 強靭なナラティブを繋ぎ、今日という一日を生きていく
- 驚異的な想像力を駆使し切った女性作家の変えようがない生きざま ―― その名はエミリー・ブロンテ
- あのこと('21) 欲望の代償の重さ
- ムーンライト('16) 男らしさという絶対信仰が溶かされていく
- 暗殺・リトビネンコ事件('07) 「銃弾で死ぬか、毒殺されるか」という悍ましい負の連鎖
- セッション('14) 光芒一閃する青春の炸裂
- MINAMATA-ミナマタ-('20) 異国の地で、呼び覚まされた写真家の本能が炸裂する
- 戦争と女の顔('19) 「戦争が延長された『戦後』」を描き切った映像の破壊力
- トップガン マーヴェリック('22) 「全員生還」という思いが雪の渓谷を切り裂いていく
- 杉原千畝 スギハラチウネ('15) 迫りくる非常時の渦中で覚悟を括り、「命のビザ」を繋いでいく
- TITANE/チタン('21) ジェンダーの矮小性をも超える異体が産まれゆく
- いつか読書する日('05) たった一度の本気の恋を成就させる思いの強さ
- さがす('22) 生まれ変わった父を信じる力が、少女の底力の推進力と化していく
- コーダ あいのうた('21) 「青春の光と影」 ―― 身を削る思いで束ねた時間の向こうに結実していく
- チョコレート・ドーナツ('12) 魂を打ち抜く反差別映画
- ドライブ・マイ・カー('21) 切り裂かれた「分別の罠」が雪原に溶かされ、噴き上げていく
- ノマドランド('21) 最後の“さよなら”がない〈生き方〉を選択していく
- ハケンアニメ!('22) 「義務自己」「理想自己」を粉砕する原点回帰への時間の旅
- 夕凪の街 桜の国(’07) 被曝で壊された〈生〉なるものを拾い集め、鮮度を得て繋いでいく
- 大河への道 ('22) 「奇跡の旅」を受け継ぐ名もなき者たちの物語
- 岬の兄妹('18) 炸裂する、障害者という「弱さ」の中の「強さ」
- 愛がなんだ('18) 後引き仕草が負の記号になってしまう女子の、終わりが見えない純愛譚
- 歓待('10) 群を抜く、「決め台詞」と叫喚シーンを捨て去った映像 ―― その鉈の切れ味
- 流浪の月('22) 小さくも、誰よりも清しい愛が生まれゆく
- 燃ゆる女の肖像('19) 窮屈な〈生〉を払拭し、湧き出る感情を一気に解き放っていく
- 硫黄島からの手紙('06) 「自決の思想」を否定する男の、途切れることのない闘争心がフル稼働する
- 英雄の証明('21) 人間の脆弱性を細密に描いた映画の切れ味
- 親愛なる同志たちへ('20) 他言無用の「赤い闇」が今、暴かれていく
- 醉いどれ天使('48) 時代遅れのヤクザに対峙し、町医者の憤怒が炸裂する
ピックアップ(2)
- 「泣く子はいねぇが」('20) 佐藤快磨 破綻から再生までの途方もない旅路
- ブータン 山の教室('19) パオ・チョニン・ドルジ 村民への優しい眼差しをリザーブした青年教師の精神浄化の物語
- 虐殺の大地を走り抜き、鮮烈な時間を拓いていく 映画「ルワンダの涙」('05)の壮絶さ
- 「その日」限定の時間を大切に生きる純愛譚の威力 映画「静かな雨」('19)
- 後追い死に最近接する青春を掬い切った燃える赤 映画「走れ、絶望に追いつかれない速さで」('15)
- 蒼然たる暮色に閉ざされながらも、〈今〉を生きる母と子の物語 映画「梅切らぬバカ」('21)
- 最も苛酷な時代に真実の報道の姿勢を貫き、散っていった勇敢なジャーナリスト、その生きざま 映画「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」('19)
- 3人の男のボクシング人生の振れ具合を描き切った傑作 映画「BLUE/ブルー」('21)
- 海辺の一角で渾身の一撃を放つ男の、人生のやり直し 映画「アナザーラウンド」('20)
- 「連合赤軍事件」 ― その同志殺しの闇の深さ
- 尊厳死に向かって、「終活」という「生き方」を自己完結させていく 映画「しあわせな人生の選択」('15)
- 純愛の強靭さを決定づける抜きん出た強度 映画「少年の君」
- 出会うことがない階層社会で呼吸を繋ぐ女性たちの、そのリアルな様態を描く 映画「あのこは貴族」('21) ―― その訴求力の高さ
- 自立する少女の身体疾駆が弾けていく 映画「いとみち」('21) ―― 心に残るエンタメの秀作
- プーチンとは何者か
- 認知症の破壊力を描き切った大傑作 映画「ファーザー 」('20) ―― その卓出した構築力
- 残された機能を生かし、打って出た自立への旅 映画「37セカンズ」('19)の強さ
- エンタメ性を丸ごと捨てた、直球勝負の社会派の秀作 映画「17歳の瞳に映る世界」('20) ―― その精緻な構成力
- 「罪なき傍観者」を断罪し、復讐劇が自己完結する 映画「プロミシング・ヤング・ウーマン」('20)の破壊力
- “憎しみに居場所なし” 異彩を放つ映画「ブラック・クランズマン」('18) ―― そのシャープな切れ味
- 全篇にわたって心理学の世界が広がっている 映画「空白」 ―― その半端なき映像強度
- 息を呑む圧巻の心理的リアリズム 映画「瞳の奥の秘密」の凄み
- 父と娘がタイアップし、破天荒な局面を突破する 映画「カメラを止めるな!」 ('17)
- 「第六感」=「ヒューリスティック」が極限状態をブレークスルーする 映画「ハドソン川の奇跡」('16)
- 依存症の地獄と、その再生を描き切った逸品 映画「凪待ち」の鋭利な切れ味 ('19)
- 「母」との短い共存の時間を偲び、想いを込めて世界で舞う「娘」 映画「ミッドナイトスワン」('20)
- 何ものにも代えがたい男の旅の収束点 映画「すばらしき世界」('20)の秀抜さ
- 「怒り」の閾値を超えていく少年の爆裂の行方 映画「怒り」の喚起力('16)
- パラスポーツが世界を変える
- 精神障害者の社会復帰への艱難な旅 映画「閉鎖病棟 -それぞれの朝-」('19)
- 瓦礫の山と化す地場で「家族写真」を撮り切った男の旅の重さ 映画「浅田家!」('20)
- 多様な関係性が思春期を育てる 映画「はちどり」('18) ―― その煌めく彩り
- 叫びを捨てた事件記者と、事件の加害性で懊悩する仕立て職人が交叉し、化学反応を起こす 映画「罪の声」('20)
- 最悪の事態に対してアップデートできない我が国の脆さ 映画「Fukushima 50」 ('20) が突きつけたもの
ピックアップ(1)
- 体育会系の懐深くに飛び込み、仇を討つ、醇乎たる男の物語 映画「宮本から君へ」('19)の峻烈さ
- 状況に馴致することによってしか呼吸を繋げなかった女の悲哀 映画「愚行録」('17) ―― その異形の情景
- 恐怖のスポットでグリーフワークが完結する 映画「蜜蜂と遠雷」('19) ―― その眩い煌めき
- 毒気なき「絶対反戦」のメッセージを異化する映画「小さいおうち」('14) ―― その異様に放つ「切なさ」>
- 「コスモポリタン」を無化した女の情愛が、地の果てまで追い駆けていく 映画「スパイの妻」('20)の表現力の凄み
- 「自分自身を信じる力」が強い男の強烈なメッセージが、風景を変えていく 映画「ノクターナル・アニマルズ」の凄み('16)
- 形容し難いほどのラストシーンの遣る瀬なさが、観る者の中枢を射抜く ―― 映画「帰れない二人」('18)
- 危機意識の共有を崩す若手官僚の正義の脆さ 映画「新聞記者」('19)
- 「別離のトラウマ」の破壊力 映画「寝ても覚めても」('18) ―― その「適応・防衛戦略」の脆弱性
- 「臭気」という、階層の絶対的境界の不文律 ―― 映画「パラサイト 半地下の家族」('19)の風景の歪み
- 捩れ切った関係交叉の齟齬が生む「もどかしさ」 ―― 映画「よこがお」('19)の訴求力の高さ
- 断片でなければ、現実は理解できない ―― 「71フラグメンツ」・映画の構造を提示する、ハネケ映像の圧倒的な凄み
- 香港死す ―― 習近平政権の人権抑圧の悍ましさ
- イングマール・ベルイマン ―― その映像宇宙のいきり立つ表現者
- 「先入観」の心理学
- 北条民雄、東條耿一、そして川端康成 ―― 深海で交叉するそれぞれの〈生〉
- 「日本人の死生観」の底の浅さ ―― 映画「おくりびと」、その幻想の収束点
- 「感情」が人間を支配する
- 同性愛者は存在するだけの理由がある
- この国で、「野球」とは何だったのか ―― 「体育会系」から「知的体育会系」への風景の遷移
- 自尊感情の心理学
- 性犯罪は「魂の殺人」である
- インセスト ―― その底層に澱む自我の歪みの本質
- 三段跳びをやってのけた男 ―― 文化大革命という狂気を越えて
- 犯罪被害者のグリーフワーク ―― その茨の道の壮絶な風景
- 「思うようにならない人生の極みのさま」 ―― 人生の真実を描き切った成瀬映画の真骨頂
- 恐怖感が人間を守る
- 人はどのように男になり、女になっていくのか
- LGBTという、押し込められた負の記号を突き抜ける肯定的な自己表現
- PTSDの破壊力に圧し潰されつつ、人間の尊厳を死守せんと闘う伊藤詩織さん ―― その逃避拒絶の鼓動の高鳴り
- ハンセン病差別の暗くて深い闇 ―― その風景の途方もない凄惨さ
- ベトナム戦争とは何だったのか
- 「雪の二・二六」 ―― 青年将校・その闘争の心理学
- 「丸刈り」にされた女 ―― 尊厳を奪回する「覚悟の帰郷」
- 戦争における「人殺し」の心理学 ―― 「見える残酷」を如何に削り取っていくか
- 「アルビノ狩り」―― その言語を絶する凄惨さ
- それでも、グローバル化は止められない
- 障害者の「全人格的な生存権」と、「人間の尊厳」の完全破壊の悍ましさ
- 「状況が歴史を動かす」 ―― 「731部隊」とは何だったのか
- 「ウイグル絶望収容所」 ── 中国共産党・その罪の重さ
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大谷翔平 ―― そのパイオニア魂に限りなし - *史上初の「シーズン50本塁打、50盗塁以上」をマークした大谷は3度目のMVPを受賞した* *同上* *1 想像を絶するプレッシャーを撥ね除けたアスリート* 大谷翔平について書くにあたって、何にも増して驚かされる事件がある。 複数の経歴について疑問を投げかけられている現在、日...1 年前
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映画史に残したい「名画」あれこれ 外国映画編(その5) - *ゴッドファーザー*(フランシス・フォード・コッポラ) 瀕死の重傷から生還した一人の男がいる。 影響力の相対的低下という、自らが置かれた厳しい状況がそうさせたのか、或いは、それ までの自分の生き方を、「愚か者」という風に相対化できるほどの年輪がそうさせたのか、それ以外に流れようがない生き方でイタリア系...13 年前
人生論的映画評論・続 映画リスト(5)
- 台北暮色('17) 非日常を紡ぎ出した関係の到達点 ホァン・シー
- 道化師の夜(‘53) 自尊心の崩壊と、掻きむしられる屈辱感の行方 イングマール・ベルイマン
- シリアの花嫁('04) <「境界突破」の果敢な「進軍」 ―― 「少しの希望」を象徴するもの> エラン・リクリス
- フルメタル・ジャケット('87) 「戦争における『人殺し』の心理学」についての映像的検証 スタンリー・キューブリック
- ツユクサ('22) それぞれの〈生〉があり、それぞれの自己運動が広がっている 平山秀幸
- ニューオーダー('20) 猟奇的好奇心の卑俗性を削ぎ落とす物語 ミシェル・フランコ
- EO イーオー('22) ヒトと動物の宿命の隔たりの大きさ イエジー・スコリモフスキ
- 君は行く先を知らない('21) 悲痛な叫びが夜の闇を切り裂いた パナー・パナヒ
- 福田村事件('23) 則るべき道理が壊れゆく 森達也
- 僕たちは希望という名の列車に乗った('18) 自ら考え、行動し、飛翔する若者たち ラース・クラウメ
- ソフト/クワイエット('22) レッドラインを越えていく女たち ベス・デ・アラウージョ
- ニトラム/NITRAM('21) 「自分が何者であるのか」という問いを立てる力 ジャスティン・カーゼル
- ゲット・アウト('17) 社会派スリラーの傑作 ジョーダン・ピール
- 戦場のメリークリスマス('07) 「神秘的で聖なる何ものか」に平伏す男の脆さ 大島渚
- キサラギ('07) エンタメ純度満点の密室劇 佐藤祐市
- 悲しみのミルク('08) 凄惨なる「地獄の記憶」を引き剥がし、進軍する クラウディア・リョサ
- にごりえ('53) 女に我慢を強いる貧困のリアリズム 今井正
- 神様のくれた赤ん坊('79) 二つの旅が溶融し、二人の旅が完結する 前田陽一
- ドラマ特例 ながらえば('85) 不器用なる〈心の旅〉が開かれていく 作・山田太一
- 夜明けまでバス停で('22) 「道徳的正しさ」で闘った女の一気の変容 高橋伴明
- せかいのおきく('23) 投げ入れる女と受け止める男 阪本順治
- she said/シー・セッド その名を暴け('22) 使命感という闘いの心理学 マリア・シュラーダー
- LOVE LIFE('22) 幻想崩壊から踏み出す一歩 深田晃司
- 評議('06) 人が人を裁くことの重さ 伊藤寿浩
- エゴイスト('23) そこだけは輝きを放つ〈愛〉のある風景 松永大司
- 帰らざる日々('78) 〈あの夏〉が蘇り、不透明な自己の〈現在性〉を穿ち、鮮度を加えて立ち上げていく 藤田敏八
- アマンダと僕('18) それでも、人間は動く ミカエル・アース
- ロストケア('23) トラウマを克服する歪んだ航跡 前田哲
- 小林多喜二('74) 闇があるから光がある 今井正
- 銀河鉄道の父('23) 魂の呻きを捩じ伏せて、なお捩じ伏せて、這い出して、熱量を噴き上げていく 成島出
人生論的映画評論・続 映画リスト(4)
- 橋のない川 第二部('70) 闘い切った映画作家の本領の眩さ 今井正
- ザ・ホエール('22) 時間の傷を溶かす距離の重さ ダーレン・アロノフスキー
- 橋のない川('69) 沸点に達した少年が状況を支配し、新たな情景を拓いていく 今井正
- ケイコ 目を澄ませて('22) 魂を込めたボクシング人生を再駆動していく 三宅唱
- レディ・バード('17) それでも私は東に跳んでいく グレタ・ガーウィグ
- オフサイド・ガールズ('06) 「都会の女たち」の熱気は、地方から出て来た兵士の男を圧倒する ジャファール・パナヒ
- 生きる('52) 黒澤ヒューマニズムの真骨頂 黒澤明
- わが青春に悔いなし('46) 顧みて悔いのない生活 黒澤明
- 潜水服は蝶の夢を見る('07) 「想像力」と「記憶」を駆使し、窮屈な“潜水服”の状態から抜け出ていく ジュリアン・シュナーベル
- ラーゲリより愛を込めて('22) 「堂々たる凡人」 ―― その生きざま 瀬々敬久
- どん底('57) 黒澤リアリズムの到達点 黒澤明
- PLAN 75 ('22) 復元し、明日に向かって西陽を遠望する 早川千絵
- 蜘蛛巣城('57) 完璧な俳優陣による完璧な構成と完璧な構築力 黒澤明
- 生きものの記録('55) 「神武景気」の只中で堂々と世に放たれたエンタメ排除の反核映画 黒澤明
- 天城越え('83) 「無常と祈り」の映像風景が揺蕩っている 三村晴彦
- 用心棒('61) 純度100%のエンタメ時代劇の決定版 黒澤明
- MINAMATA-ミナマタ-('20) 異国の地で、呼び覚まされた写真家の本能が炸裂する アンドリュー・レヴィタス
- 1987、ある戦いの真実('17) 公安⇔反体制的学生・市民という激発的衝突の向こうに チャン・ジュナン
- 醉いどれ天使('48) 時代遅れのヤクザに対峙し、町医者の憤怒が炸裂する 黒澤明
- 親愛なる同志たちへ('20) 他言無用の「赤い闇」が今、暴かれていく アンドレイ・コンチャロフスキー
- 英雄の証明('21) 人間の脆弱性を細密に描いた映画の切れ味 アスガー・ファルハディ
- 線は、僕を描く('22) 二つの青春 ―― その浄化の旅 小泉徳宏
- 硫黄島からの手紙('06) 「自決の思想」を否定する男の、途切れることのない闘争心がフル稼働する クリント・イーストウッド
- 百花('22) 複層的に覆う負の記憶が解けていく 川村元気
- 燃ゆる女の肖像('19) 窮屈な〈生〉を払拭し、湧き出る感情を一気に解き放っていく セリーヌ・シアマ
- 流浪の月('22) 小さくも、誰よりも清しい愛が生まれゆく 李相日
- 死刑にいたる病 ('22) 叫びを捨てた怪物が放つ、人たらしの手品に呑み込まれ、同化していく 白石和彌
- 歓待('10) 群を抜く、「決め台詞」と叫喚シーンを捨て去った映像 ―― その鉈の切れ味 深田晃司
- 杉原千畝 スギハラチウネ('15) 迫りくる非常時の渦中で覚悟を括り、「命のビザ」を繋いでいく チェリン・グラック
- 暗殺・リトビネンコ事件('07) 「銃弾で死ぬか、毒殺されるか」という悍ましい負の連鎖 アンドレイ・ネクラーソフ
- 戦争と女の顔('19) 「戦争が延長された『戦後』」を描き切った映像の破壊力 カンテミール・バラーゴフ
- 愛がなんだ('18) 後引き仕草が負の記号になってしまう女子の、終わりが見えない純愛譚 今泉力哉
- 嵐が丘('92) 憎悪の感情の束が打ち抜かれゆく ピーター・コズミンスキー
- 峠 最後のサムライ('19) 己が〈生〉を、余すところなく生き切った男の物語 小泉堯史
- 岬の兄妹('18) 炸裂する、障害者という「弱さ」の中の「強さ」 片山慎三
- 大河への道 ('22) 「奇跡の旅」を受け継ぐ名もなき者たちの物語 中西健二
- 夕凪の街 桜の国(’07) 被曝で壊された〈生〉なるものを拾い集め、鮮度を得て繋いでいく 佐々部清
- 土喰らう十二ヵ月('22) 「今日」という一日を丁寧に生きていく 中江裕司
- 千夜、一夜('22) 強靭なナラティブを繋ぎ、今日という一日を生きていく 久保田直
- 前科者('21) 自己救済への長くて重い内的時間の旅 岸善幸
- 八月の狂詩曲('91) 「戦時の悲劇」と「牧歌的な平和」が架橋する 黒澤明
- 僕が跳びはねる理由('21) 自分たちのリズムを壊すことなく、成長を望む思いを共有していく ジェリー・ロスウェル
- ルーム('15) 「途轍もない特異性」が抱え込む破壊力が溶けていく レニー・エイブラハムソン
- ヤクザと家族 The Family ('21) 求めても、求めても得られない「家族」という幻想 藤井道人
- ムーンライト('16) 男らしさという絶対信仰が溶かされていく バリー・ジェンキンス
- ベルファスト('21) 有明の月を目指す家族の障壁突破の物語 ケネス・ブラナー
- ベイビー・ブローカー('22) 「生まれてくれて、ありがとう」 ―― この生育を守り抜いていく 是枝裕和
- ハケンアニメ!('22) 「義務自己」「理想自己」を粉砕する原点回帰への時間の旅 吉野耕平
- ノマドランド('21) 最後の“さよなら”がない〈生き方〉を選択していく クロエ・ジャオ
- ドライブ・マイ・カー('21) 切り裂かれた「分別の罠」が雪原に溶かされ、噴き上げていく 濱口竜介
- トップガン マーヴェリック('22) 「全員生還」という思いが雪の渓谷を切り裂いていく ジョセフ・コシンスキー
- チョコレート・ドーナツ('12) 魂を打ち抜く反差別映画 トラヴィス・ファイン
- セッション('14) 光芒一閃する青春の炸裂 デイミアン・チャゼル
- ジョジョ・ラビット('19) 生き抜く強さの連鎖が、刷り込まれた「英雄物語」を解体していく タイカ・ワイティティ
- コーダ あいのうた('21) 「青春の光と影」 ―― 身を削る思いで束ねた時間の向こうに結実していく シアン・ヘダー
- アルプススタンドのはしの方('20) 迸る熱中に溶融する「しょうがない」の心理学 城定秀夫
- わたしは最悪。('21) 終わりが見えない「自分探し」の旅に終止符が打たれいく ヨアキム・トリアー
- ひろしま('53) 怒りを力に変え、その惨状を描き切った唯一無二の幻の名画 関川秀雄
- はじまりのみち('13) 旅に出た若者が「基地」に帰還し、新たな旅に打って出る 原恵一
- さがす('22) 生まれ変わった父を信じる力が、少女の底力の推進力と化していく 片山慎三
- こちらあみ子('22) 小さなスポットに置き去りにされた感情を共有できな無力感 森井勇佑
- いつか読書する日('05) たった一度の本気の恋を成就させる思いの強さ 緒方明
- ある男('22) 束の間の至福を経て昇天する男が物語を揺動させていく 石川慶
- あのこと('21) 欲望の代償の重さ オードレイ・ディヴァン
- TITANE/チタン('21) ジェンダーの矮小性をも超える異体が産まれゆく ジュリア・デュクルノー
人生論的映画評論・続 映画リスト(3)
- 「泣く子はいねぇが」('20) 佐藤快磨 破綻から再生までの途方もない旅路
- ブータン 山の教室('19) パオ・チョニン・ドルジ 村民への優しい眼差しをリザーブした青年教師の精神浄化の物語
- ウインド・リバー('17) テイラー・シェリダン
- ダラス・バイヤーズクラブ('13) ジャン=マルク・ヴァレ
- 虐殺の大地を走り抜き、鮮烈な時間を拓いていく 映画「ルワンダの涙」('05)の壮絶さ マイケル・ケイトン=ジョーンズ
- 名もなき歌('19) メリーナ・レオン
- 米騒動とは何だったのか 映画「大コメ騒動」('21)に寄せて 本木克英
- 「その日」限定の時間を大切に生きる純愛譚の威力 映画「静かな雨」('19) 中川龍太郎
- 後追い死に最近接する青春を掬い切った燃える赤 映画「走れ、絶望に追いつかれない速さで」('15) 中川龍太郎
- 蒼然たる暮色に閉ざされながらも、〈今〉を生きる母と子の物語 映画「梅切らぬバカ」('21) 和島香太郎
- アイヒマンの後継者 ミルグラム博士の恐るべき告発(‘15) ハンネス・ホルム
- 最も苛酷な時代に真実の報道の姿勢を貫き、散っていった勇敢なジャーナリスト、その生きざま 映画「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」('19) アグニェシュカ・ホランド
- 3人の男のボクシング人生の振れ具合を描き切った傑作 映画「BLUE/ブルー」('21) 𠮷田恵輔
- 護られなかった者たちへ('20) 瀬々敬久
- 海辺の一角で渾身の一撃を放つ男の、人生のやり直し 映画「アナザーラウンド」('20) トマス・ヴィンターベア
- 海街diary (‘15) 是枝裕和
- 尊厳死に向かって、「終活」という「生き方」を自己完結させていく 映画「しあわせな人生の選択」('15) セスク・ゲイ
- 望み('20) 堤幸彦
- ナチュラルウーマン('17) セバスティアン・レリオ
- 純愛の強靭さを決定づける抜きん出た強度 映画「少年の君」 デレク・ツァン
- 出会うことがない階層社会で呼吸を繋ぐ女性たちの、そのリアルな様態を描く 映画「あのこは貴族」('21) ―― その訴求力の高さ 岨手由貴子
- 自立する少女の身体疾駆が弾けていく 映画「いとみち」('21) ―― 心に残るエンタメの秀作 横浜聡子
- 認知症の破壊力を描き切った大傑作 映画「ファーザー 」('20) ―― その卓出した構築力 フローリアン・ゼレール
- 裸足の季節('15) デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン
- 残された機能を生かし、打って出た自立への旅 映画「37セカンズ」('19)の強さ HIKARI
- エンタメ性を丸ごと捨てた、直球勝負の社会派の秀作 映画「17歳の瞳に映る世界」('20) ―― その精緻な構成力 エリザ・ヒットマン
- 「罪なき傍観者」を断罪し、復讐劇が自己完結する 映画「プロミシング・ヤング・ウーマン」('20)の破壊力 エメラルド・フェネル
- “憎しみに居場所なし” 異彩を放つ映画「ブラック・クランズマン」('18) ―― そのシャープな切れ味 スパイク・リー
- 茜色に焼かれる('21) 石井裕也
- 全篇にわたって心理学の世界が広がっている 映画「空白」 ―― その半端なき映像強度 𠮷田恵輔
- 街の上で('19) 今泉力哉
- パピチャ 未来へのランウェイ('19) ムニア・メドゥール
- 幸せなひとりぼっち(‘15) ハンネス・ホルム
- MOTHER マザー('20) 大森立嗣
- 息を呑む圧巻の心理的リアリズム 映画「瞳の奥の秘密」の凄み フアン・ホセ・カンパネラ
- 天外者('20) 田中光敏
- 父と娘がタイアップし、破天荒な局面を突破する 映画「カメラを止めるな!」 ('17) 上田慎一郎
- ペイン・アンド・グローリー('19) ペドロ・アルモドバル
- 「第六感」=「ヒューリスティック」が極限状態をブレークスルーする 映画「ハドソン川の奇跡」('16) クリント・イーストウッド
- 依存症の地獄と、その再生を描き切った逸品 映画「凪待ち」の鋭利な切れ味 ('19) 白石和彌
- 「母」との短い共存の時間を偲び、想いを込めて世界で舞う「娘」 映画「ミッドナイトスワン」('20) 内田英治
- ミナリ('20) リー・アイザック・チョン
- 何ものにも代えがたい男の旅の収束点 映画「すばらしき世界」('20)の秀抜さ 西川美和
- ジョーカー('19) トッド・フィリップス
- 「怒り」の閾値を超えていく少年の爆裂の行方 映画「怒り」の喚起力('16) 李相日
- 孤狼の血('18) 白石和彌
- アンダードッグ('20) 武正晴
- 長いお別れ('19) 中野量太
- 精神障害者の社会復帰への艱難な旅 映画「閉鎖病棟 -それぞれの朝-」('19) 平山秀幸
- 瓦礫の山と化す地場で「家族写真」を撮り切った男の旅の重さ 映画「浅田家!」('20) 中野量太
- 多様な関係性が思春期を育てる 映画「はちどり」('18) ―― その煌めく彩り キム・ボラ
- 叫びを捨てた事件記者と、事件の加害性で懊悩する仕立て職人が交叉し、化学反応を起こす 映画「罪の声」('20) 土井裕泰
- 最悪の事態に対してアップデートできない我が国の脆さ 映画「Fukushima 50」 ('20) が突きつけたもの 若松節朗
- 体育会系の懐深くに飛び込み、爆裂する男の純愛譚 映画「宮本から君へ」('19)の苛烈さ 真利子哲也
人生論的映画評論・続 映画リスト(2)
- 母さんがどんなに僕を嫌いでも('18) 御法川修
- 状況に馴致することによってしか呼吸を繋げなかった女の悲哀 映画愚行録('17) ―― その異形の情景 石川慶
- 恐怖のスポットでグリーフワークが完結する 映画「蜜蜂と遠雷」('19) ―― その眩い煌めき 石川慶
- 晩年の2年間に爆裂する男の「激情的習得欲求」の軌跡 映画「永遠の門 ゴッホの見た未来」('18) ジュリアン・シュナーベル
- 午後8時の訪問者('16) ダルデンヌ兄弟
- 映画短評 幸福なラザロ('18) アリーチェ・ロルヴァケル
- 斬、('18) 塚本晋也
- 毒気なき「絶対反戦」のメッセージを異化する映画「小さいおうち」('14) ―― その異様に放つ「切なさ」 山田洋次
- 「愛」があって「性」がある関係にのめり込んでいった少女の「愛の風景」 映画「第三夫人と髪飾り」('18)が訴える、女性差別の裸形の情態 アッシュ・メイフェア
- 「それでも、日本人は『戦争』を選んだ」 ―― 映画「永遠の0」('13)という照準枠 山崎貴
- 愛する人('09) ロドリゴ・ガルシア
- わたしは光をにぎっている('19) 中川龍太郎
- その手に触れるまで('19) ダルデンヌ兄弟
- 「コスモポリタン」を無化した女の情愛が、地の果てまで追い駆けていく 映画「スパイの妻」('20)の表現力の凄み 黒沢清
- 自己運動の底部を崩さず、迷い、煩悶し、考え抜いて掴んでいく ―― 映画「星の子」('20)の秀逸さ 大森立嗣
- ある少年の告白('18) ジョエル・エドガートン
- 生きちゃった('20) 石井裕也
- 町田くんの世界('19) 石井裕也
- blank13('17) 齊藤工
- LION/ライオン 〜25年目のただいま〜('16) ガース・デイヴィス
- 勝手にふるえてろ('17) 大九明子
- ビューティフル・デイ('17) リン・ラムジー
- ドラマ特例篇 「この戦は、おのれ一人の戦だと思うている」 ―― 「『麒麟がくる』本能寺の変」・そのクオリティの高さ
- 東ベルリンから来た女(‘12)
- 心と体と('17) イルディコー・エニェディ
- 夜明けの祈り('16) アンヌ・フォンテーヌ
- 獣は月夜に夢を見る('14) ヨナス・アレクサンダー・アーンビー
- きっと、いい日が待っている('16) イェスパ・W・ネルスン
- シングルマン('09) トム・フォード
- 「自分自身を信じる力」が強い男の強烈なメッセージが、風景を変えていく 映画「ノクターナル・アニマルズ」の凄み('16) トム・フォード
- 神々と男たち(’10) グザヴィエ・ボーヴォワ
- ひつじ村の兄弟(‘15) グリームル・ハゥコーナルソン
- 形容し難いほどのラストシーンの遣る瀬なさが、観る者の中枢を射抜く ―― 映画「帰れない二人」('18) ジャ・ジャンクー
- 危機意識の共有を崩す若手官僚の正義の脆さ 映画「新聞記者」('19) 藤井道人
- 禁じられた歌声('14) アブデラマン・シサコ
- 自転車泥棒 ('48) ヴィットリオ・デ・シーカ
- ガーンジー島の読書会の秘密('18) マイク・ニューウェル
- 残像('16) アンジェイ・ワイダ
- 海を駆ける('18) 深田晃司
- DVの犯罪性を構造的に提示した映画「ジュリアン」 ―― その破壊力の凄惨さ グザヴィエ・ルグラン
- ロスト・イン・トランスレーション(’03) ソフィア・コッポラ
- 「別離のトラウマ」の破壊力 映画「寝ても覚めても」('18) ―― その「適応・防衛戦略」の脆弱性 濱口竜介
- 「バカンス」を軟着させた青春の息づかい ―― 映画「ほとりの朔子」(’13)の素晴らしさ 深田晃司
- SOMEWHERE ('10) ソフィア・コッポラ
- オーバー・フェンス('16) 山下敦弘
- The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ('17) ソフィア・ コッポラ
- 武装解除できない青春の壊れやすさ 映画「きみの鳥はうたえる」('18) ―― その「予定不調和」の秀逸な収斂点 三宅唱
- 「俗悪なリアリズム」という、イラン映画の絶対的禁忌 ―― 映画「人生タクシー」の根源的問題提起 ジャファル・パナヒ
- ひとよ('19) 白石和彌
- 「臭気」という、階層の絶対的境界の不文律 ―― 映画「パラサイト 半地下の家族」('19)の風景の歪み ポン・ジュノ
- ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書('17) スティーヴン・スピルバーグ
- 捩れ切った関係交叉の齟齬が生む「もどかしさ」 ―― 映画「よこがお」('19)の訴求力の高さ 深田晃司
- たかが世界の終わり('16) グザヴィエ・ドラン
- ゼイン ―― その魂の叫び 映画「存在のない子供たち」('18)が訴えた「児童婚」・「児童売買」の陰惨な風景 ナディーン・ラバキー
- 断片でなければ、現実は理解できない ―― 「71フラグメンツ」・映画の構造を提示する、ハネケ映像の圧倒的な凄み
- グリーンブック('18) ピーター・ファレリー
- シン・ゴジラ('16) 庵野秀明
- かくも長き不在('61) アンリ・コルピ
- ワイルドライフ('18)
- パターソン('16) ジム・ジャームッシュ
- 半世界('19) 阪本順治
- COLD WAR あの歌、2つの心('18) パヴェウ・パヴリコフスキ
- エリザのために('16) クリスティアン・ムンジウ
- 日日是好日('18) 大森立嗣
- 映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ('17) 石井裕也
- イングマール・ベルイマン ―― その映像宇宙のいきり立つ表現者
- わらの犬('71) サム・ペキンパー
- 万引き家族('18) 是枝裕和
- 女は二度決断する('17) ファティ・アキン
- 三度目の殺人 ('17) 是枝裕和
- 判決、ふたつの希望('17) ジアド・ドゥエイリ
- ラブレス('17) アンドレイ・ズビャギンツェフ
- バスキアのすべて('10) タムラ・デイヴィス
- エレナの惑い('11) アンドレイ・ズビャギンツェフ
- スポットライト 世紀のスクープ('15) トム・マッカーシー
- 裁かれるは善人のみ('14) アンドレイ・ズビャンギンツェフ
- 永い言い訳('16) 西川美和
- 湯を沸かすほどの熱い愛('16) 中野量太
- 山河ノスタルジア('15) ジャ・ジャンクー
- 幼子われらに生まれ('17) 三島有紀子
- スリー・ビルボード('17) マーティン・マクドナー
- わたしは、ダニエル・ブレイク ('16) ケン・ローチ
- ヒトラーの忘れもの('15) マーチン・サントフリート
- ティエリー・トグルドーの憂鬱('15) ステファヌ・ブリゼ
- セールスマン(’16) アスガー・ファルハディ
- ハッピーエンド(’17) ミヒャエル・ハネケ
- あの夏、いちばん静かな海。('91) 北野武
- 夜と霧('55) アラン・レネ
- ライフ・イズ・ビューティフル('98)
- ノーカントリー
- ヒッチコック(‘12)
- チェンジリング
- トゥルーマン・ショー
- フライト
- 紙の月
- アデルの恋の物語
- 愛を読むひと
- 秋のソナタ
- 羊たちの沈黙
- 靖国 YASUKUNI
- しゃべれども しゃべれども
- カポーティ
- かもめ食堂
- 赤い殺意
- クレイマー、クレイマー
- 時計じかけのオレンジ
- ミリオンダラー・ベイビー
- ピアノ・レッスン
- パピヨン
- 二十日鼠と人間
- 戦場のピアニスト
- 東京物語
- マルホランド・ドライブ
- JUNO/ジュノ
- フルメタル・ジャケット
- ピアニスト
- 白いリボン
- 隠された記憶
- ファニーゲーム
- 人は皆、自分自身をどこまで把握して生きているのか ―― 映画「嘆きの天使」の「予約された酷薄さ」
- 葛城事件(’16)
- 淵に立つ
- 映画「ブラス!」に見る怨嗟と甘えの構造
- キャロル(’15)
- あん(’15)
- さざなみ(’15)
- サウルの息子(’15)
- ディーパンの闘い(’15)
- ぼくらの家路(’13)
- 草原の実験(’14)
- マルタのことづけ(‘13)
- 失われた週末(’45)
- 冬冬の夏休み(’84)
- 悪魔のいけにえ(’74)
- 珈琲時光(’03)
- イロイロ ぬくもりの記憶 (’13)
- デリカテッセン(’91)
- スモーク(’95)
- サン★ロレンツォの夜(’82)
- アリスのままで(’14)
- 山椒大夫(’54)
- エデンより彼方に(’02)
- 祇園囃子(’53)
- サイの季節(’12)
- 未来を生きる君たちへ(’10)
- 真夜中のゆりかご(‘14)
- エル・スール(’82)
- 野火(’14)
- 名もなき塀の中の王(’13)
- 岸辺の旅(’15)
- さよなら渓谷(’13)
- 夏をゆく人々(‘14)
- ショート・ターム(’13)
- 父 パードレ・パドローネ(‘77)
- 楢山節考(‘83)
- リアリティのダンス(‘13)
- その男、凶暴につき(‘89)
- サイダーハウス・ルール(’99)
- トレーニングデイ(‘01)
- サンドラの週末(‘14)
- きみはいい子(‘14)
- 海にかかる霧(‘14)
- 大統領の執事の涙(‘13)
- フォックスキャッチャー(‘14)
- おみおくりの作法(’13)
- 黒衣の刺客(‘15)
- 私の、息子(‘13)
- 初恋のきた道(‘99)
- 自由が丘で(‘14)
- 仮面ペルソナ(‘66)
- 第七の封印(‘56)
- 利休にたずねよ(‘13)
- コーヒーをめぐる冒険(‘12)
- こわれゆく女(‘74)
- ガタカ(‘97)
- ローマ環状線、めぐりゆく人生たち(‘13)
- 狩人の夜(‘55)
- 遠い空の向こうに(‘99)
- マレーナ(‘00)
- 声をかくす人(‘11)
- バンクーバーの朝日(‘14)
- ラリーフリント(’96)
- 悪童日記(’13)
- エレニの帰郷(’08)
- 父の秘密(‘12)
- 少女は自転車にのって(‘12)
- 柘榴坂の仇討(‘14)
- 光にふれる(‘14)
- 百円の恋(‘14)
- 鴛鴦歌合戦(‘39)
- ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅(‘13)
- 真珠の耳飾りの少女(‘03)
- 蜩ノ記(‘13)
- 眺めのいい部屋(‘86)
- 転々(‘07)
- 鉄くず拾いの物語(‘13)
- 薄氷の殺人(‘14)
- 蝉しぐれ(‘05)
- 蠢動 -しゅんどう-(‘13)
- バートン・フィンク(‘91)
- フルートベール駅で(‘13)
- 罪の手ざわり(‘13)
- ある過去の行方(‘13)
- 武士の献立(‘13)
- 武士の家計簿('10)
- インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌(‘13)
- トゥヤーの結婚(‘06)
- さよなら、アドルフ(‘12)
- 酒井家のしあわせ(‘06)
- その夜の侍(‘12)
- 私の男(‘13)
- オカンの嫁入り(‘10)
- それでも夜は明ける(‘13)
- 少年は残酷な弓を射る(‘11)
- ぼくたちの家族(‘13)
- そこのみにて光輝く(‘13)
- ブルージャスミン(‘13)
- 東京公園(‘11)
- ハンナ・アーレント(‘12)
- ツレがうつになりまして(‘11)
- ポセイドン・アドベンチャー(‘72)
- うなぎ(‘97)
- そして父になる(‘13)
- ペコロスの母に会いに行く(‘13)
- 迷子の警察音楽隊(‘07)
- 黄昏(‘81)
- マグノリアの花たち(‘89)
- 奇人たちの晩餐会(‘98)
- 共喰い(‘13)
- 嘆きのピエタ(‘12)
- もう一人の息子(‘12)
- ブロークン・フラワーズ(‘05)
- そして、私たちは愛に帰る(‘07)
- 復讐するは我にあり(‘79)
- プライドと偏見(‘05)
- ふがいない僕は空を見た(‘12)
- マイライフ・アズ・ア・ドッグ(‘85)
- 北北西に進路を取れ(‘59)
- 知りすぎていた男(‘56)
- 真実の行方(‘96)
- 百万円と苦虫女(‘08)
- めまい(‘58)
- 亀も空を飛ぶ(‘04)
- コンプライアンス 服従の心理(‘12)
- もらとりあむタマ子(‘13)
- 思秋期(‘10)
- ミザリー(‘90)
- 光のほうへ(‘10)
- 偽りなき者(‘12)
- 終着駅 トルストイ最後の旅(‘09)
- 汚れなき悪戯(‘55)
- 聯合艦隊司令長官 山本五十六-太平洋戦争70年目の真実- (‘11)
- ゼア・ウィル・ビー・ブラッド(‘07)
- 仁義なき戦い(‘73)
- トト・ザ・ヒーロー(‘91)
- JAWS/ジョーズ(‘75)
- コード・アンノウン(‘00)
- 明日の記憶(‘05)
- ザ・マスター(‘12)
- 塀の中のジュリアスシーザー(‘12)
- バベットの晩餐会(‘87)
- 南極料理人(‘09)
- 舟を編む(‘13)
- パーマネント野ばら(‘10)
- キツツキと雨(‘11)
- 蒲田行進曲(‘82)
- プラトーン(‘86)
- シャイン(‘95)
- カサブランカ(‘42)
- 鍵泥棒のメソッド(‘12)
- ローマの休日(‘53)
- 青の炎(‘03)
- 夢売るふたり(‘12)
- 大いなる西部(‘58)
- 阿修羅のごとく(‘03)
- 女相続人(‘49)
- リービング・ラスベガス(‘95)
- ジャッカルの日(‘73)
- U・ボート(‘81)
- 東京オリンピック(‘65)
- 細雪(‘83)
- 体育会系の懐深くに飛び込み、仇を討つ、醇乎たる男の物語 映画「宮本から君へ」('19)の峻烈さ 真利子哲也
人生論的映画評論・続 映画リスト
- 愛、アムール(‘12)
- ビルマの竪琴(‘56)
- 17歳のカルテ(‘99)
- 月世界旅行(‘02)
- 世界最古の洞窟壁画 3D 忘れられた夢の記憶(‘10)
- ベニーズ・ビデオ(‘92)
- 櫻の園(‘90)
- アギーレ/神の怒り(‘72)
- 魚影の群れ(‘83)
- わが心のボルチモア(‘90)
- 籠の中の乙女(‘09)
- 陸軍(‘44)
- セブンス・コンチネント(‘89)
- 田舎司祭の日記(‘50)
- 生きるべきか死ぬべきか(‘42)
- 小間使の日記(‘63)
- 空中庭園(‘05)
- ピクニックatハンギング・ロック(‘75)
- タイム・オブ・ザ・ウルフ(‘03)
- 西部戦線異状なし(‘30)
- 蛇イチゴ(‘03)
- 必死剣 鳥刺し(‘10)
- 忘れられた人々(‘50)
- メランコリア(‘11)
- ル・アーヴルの靴みがき(‘11)
- かぞくのくに(‘11)
- 終の信託(‘12)
- 桐島、部活やめるってよ(‘12)
- 暗殺の森(‘70)
- リアリズムの宿(‘03)
- 腑抜けども、悲しみの愛を見せろ(‘07)
- おとなのけんか(‘11)
- 愛の嵐(‘73)
- アーティスト(‘11)
- 灼熱の魂(‘10)
- ヒューゴの不思議な発明(‘11)
- マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙(‘11)
- ミッドナイト・イン・パリ(‘11)
- ニーチェの馬(‘11)
- 八月の鯨(‘87)
- 隠し剣 鬼の爪(‘04)
- アメリカン・ヒストリーX(‘98)
- わが母の記(‘11)
- 反撥(‘64)
- カイロの紫のバラ(‘85)
- 大鹿村騒動記(‘11)
- あ、春(‘98)
- 刑事ジョン・ブック 目撃者(‘85)
- たそがれ清兵衛(‘02)
- 無言歌(‘10)
- 気狂いピエロ(‘65)
- 少年と自転車(‘11)
- グッドフェローズ(‘90)
- 別離(‘11)
- ロルナの祈り(‘08)
- アンチクライスト(‘09)
- 一枚のハガキ(‘10)
- トラフィック(‘00)
- マネーボール(‘11)
- 2001年宇宙の旅(‘68)
- ゴーストライター('10)
- ツリー・オブ・ライフ('11)
- クィーン(‘06)
- 家族の庭(‘10)
- セブン(‘95)
- 息もできない(‘08)
- レインマン(’88)
- ブラック・スワン('10)
- 冒険者たち(’67)
- 空気人形('09)
- マンデラの名もなき看守('07)
- 激突('71)
- ミツバチのささやき('73)
- ラストキング・オブ・スコットランド('06)
- カティンの森('07)
- クラッシュ ('04)
- 蜂蜜('10)
- ヤコブへの手紙('09)
- 彼女が消えた浜辺('09)
- バビロンの陽光('10)
- 街の灯('31)
- 英国王のスピーチ('10
- サラエボの花('06)
- ゴッドファーザー('72)
- ニキータ('90)
- シコふんじゃった。('91)
- キャタピラー('10)
- 家族ゲーム('83)
- ソナチネ('93)
- 冬の小鳥('09)
2008年11月11日火曜日
晩菊('54) 成瀬巳喜男
<それでも女は生きていく>
1 人間の卑屈なさまをも容赦なく映し出す成瀬ワールドの中に
杉村春子、望月優子、細川ちか子。
この三人の女優の味わいのある演技の交錯が、物語を最後まで引っ張って行く。
共に昔芸者をしていたが、零落した二人が、今や高利貸しとなった杉村春子に借金を取り立てられる日々に不満を託(かこ)っている。何とも遣り切れないそうした日常のさまが執拗に描写されていても、観る者を滅入らせたりしない。日常性をきっちり描く成瀬映画の力量が、どれほど暗いテーマでも、観る者に共感的理解を起こさせてしまうからだ。
醜くも、そのように動かざるを得ない人間の卑屈なさまをも容赦なく映し出す成瀬ワールドの中に、私を含む彼の幅広い支持者たちは、恐らく、等身大の自画像を見て、どこかで安堵するのではないだろうか。
嫉妬や不信、失望、諦めや居直りが渦巻くような「晩菊」のリアリズムは、私たちの日常性そのものだった。望月優子のモンローウォークで終わるラストシーンの爽快感は、人間を見る眼の成瀬の確かさが創り出したものとしか言いようがない。
2 「晴れのち雨」―― 借金取りの女
―― 映像を詳細に追っていく。
そこだけは何とか舗装されているように見える裏通りに、眩しい陽光が照り返し、そこを商店の宣伝カーが通り抜け、まだ歩行者が支配していた道路の傍らを子供連れの母親が、心地良い律動感を保って悠々と歩いている。両側に定間隔で並立する木製の電信柱の脇には、如何にも時代を思わせる自転車が数台並んでいる。その道路から分岐する狭い裏道を、元気一杯の子供たちが駆け抜けていく。男の子たちは一様に坊主頭で、女の子たちは一様に御河童頭(おかっぱあたま)だった。
これが、「晩菊」のファーストシーン。
成瀬映画に特徴的な映像の入り方は、大抵、このように時代を写す庶民の生活の風景描写で彩られている。それが、殆ど何も起こらない最も地味なる映画の導入部であるとするならば、一つ一つのカットがそれぞれ映像を象徴する味わい深い布石になっているので、観る方も柔和な眼差しでそれを受容する構えを自然に形成することになる。多くの成瀬ファンは、このようにして、彼の映像宇宙に這い入っていくのであろうか。
「おはようございます」
裏通りから路地裏を抜けて、一人の中年男がきんの家を訪ねて来た。
丁度、金勘定をしていたきんが後ろを振り返ると、女が二人で住むには充分な間取りの家に、ある種の風格を与えるような柱時計は11時25分を指していた。
板谷(いたや)と称するその中年男は、以前からきんの仕事上の相談相手になっていて、この日も不動産の物件の相談のため女所帯の家にやって来たのである。きんの仕事の本業は金貸しだが、それ以外に板谷のサポートを受けて、不動産投機などで貪欲に蓄財している様子だった。
一方、お手伝いさんの女の子は聾唖者で、きんの家に住み込んでいる。彼女は発語できなくても、きんとの意思疎通は万全のように見える。お互いに手話のような遣り取りを普通に交わす中で、静寂な空間に不思議な存在感を醸し出していた。
「まあ、戸締りでも気をつけてください。春はとかく物騒ですから」
手付金の20万円を受け取った板谷は、そう言って、見るからに物騒な女所帯の家を後にした。
女が一人で自立して生きていくことは大変な社会の只中に、きんは自らの才覚によって時代と繋がっている。彼女の蓄財を守るものは、彼女自身の強い覚悟の内にしかないように思われる。それが、一切の不要な描写を省いたファーストシーンが、観る者に端的に説明するカットとなっていた。
裏通りにちんどん屋の天を突くような明るいメロディが、曲線的な流れを描いて踊っている。そんな風情を垣間見せた後、夫と飲み屋を営んでいるのぶの店に、きんは裏口から入って来た。
「あら、裏から?」
「この間みたいに裏から逃げ出されたら、困ると思って」
この会話の中に、既にのぶときんの関係の優劣性が覗われる。
毎月の借金の返済を求めるきんの正当なる督促に対して、商売の稼ぎが悪かった先月は、きんの取立ての気配を感じたのぶが、店の裏口から姿を消したに違いない。
しかし、今日は違っていた。
予め用意していた返済金をきんの前に揃えて、のぶは商売が上向きかけたことを説明したばかりか、その余裕の勢いで、「子供を作りたい」と考えているなどと誇って見せた。
「止めなさいよ、今更」
きんは、手渡された金を数えながら冷ややかに答えた。
「でもねぇ、まだ産めないことないと思って・・・・」
「人参の生ばかり齧(かじ)っているんですよ」
人の良さそうな亭主は、ここで横槍を入れてきた。
「あんた黙ってらっしゃい」とのぶ。
「こいつ、人前だと威張ってばかりいる」と亭主。
この子供のいない中年夫婦の関係の良好さが伝わってくるような、細(ささ)やかなシーン。
お茶の勧めを断ったきんは、去り際に皮肉を言うことを忘れなかった。
「これから、たまえさんの所に行かなくちゃ。もう、あの人には困っちゃうわ。三月も溜めてんのよ。大きな息子を持ちながら、子供なんて当てにならないものらしいわね」
子供は疎か亭主もいないきんには、のぶの話は不快な情報でしかない。勿論、それが嫉妬感情から来ているものではないことは、まもなく分ってくる。席を立ちかけたきんに、今度はのぶの方から軽いカウンターパンチ。
「ねえ、おきんさん。関さんがよく来るのよ、この頃。あんたに是非会いたいって。あたし、はっきり家(うち)教えないでいるんだけど」
きんの顔が一瞬変わった。
「来たって会いはしないわよ、あたし」
「でもねぇ、話を聞いてみれば可哀想よ。満州ずっと流れてる間、あんたのことが忘れられなかったって。そりゃそうでしょう?男の一生台無しにしたようなもんですもんね」
「人聞きの悪いこと言わないでよぅ。関さん来たら、そう言ってちょうだい。おきんも老いぼれてね。その日その日、やっと息ついていますって。逆さにしたって、何も出るもんありませんって・・・・」
そう言い放って、きんは足早に立ち去った。「また来月も宜しく」という言葉を残して。
「あの挨拶の立派なこと・・・」とのぶ。
「しかし、何となく違うね」と亭主。
「何が?」とのぶ。
「芸者していただけあってさ、あの首筋の辺り・・・」
「ふん・・・・男を手玉にとって、阿漕(あこぎ)なお金稼いでさ。関さんだって一度は心中までした仲じゃないか。おまけに男の方だけ殺人未遂で刑務所に入れられてさ。ろくなことないから、あの人」
この中年夫婦の会話によって、きんの過去の一端が明らかにされる。少なくとも、彼女の過去が男の問題でトラブルを起し、かなり苦労したに違いないことを。
きんが今度訪れたのは、たまえの勤めている旅館。しかし、そこで掃除婦をしているはずのたまえは病気で休んでいた。
その足で今度は、きんは雑役婦をしているとみを訪ねた。
彼女は生来の元気者らしく、ギャンブル三昧の生活を送っていて、いつも金欠状態が続いている。そんなとみにひと通り愚痴を零した後、きんはたまえの家を訪ねた。彼女は病気で床に伏せっていた。
「仮病かと思ってさ、おとみさんのとこ寄って聞いてきたの・・・どこも悪そうに見えないじゃないの」
「心臓なの。立ち上がると眩暈(めまい)がしてね」
散々愚痴を零すたまえに対して、きんは借金の返済を迫るだけ。
「二、三日待ってちょうだい」と弁明するたまえ。昔芸者で売った色気を残す中年女も、今や、そのひ弱さを露呈するばかり。
そこに、彼女の唯一の生き甲斐である息子の清が戻って来た。
就職試験で不調だった息子の愛想が悪く、「早く返しちまえよ」との聞こえよがしの厭味がきんの耳に入って、「二、三日したらまた来ますから」という一言を残して、きんは退散した。この日不調だったのは、まさに借金取りが不成功に終わったきんの方だった。
3 愚痴を零す女、悪口を言う女
借金取りが退散した後に残された、母と一人息子。そんな母たまえの前に、息子の手から千円札が二枚置かれた。
「どうしたの?これ」と母。
「夕べはどうも済みませんでした。泊まってきてご心配だったでしょ」と息子。
「このお金、どうしたっていうのよ」と母。
「あいつの顔に叩きつけてやりたかったな」と息子。母の質問に答えない。
「清、あんた何か悪いことでもして・・・」と母。
答えない息子を余計に案じて愚痴を零すだけ。そんな母に、息子は突き放すように言った。
「だからね、僕はママの代わりに、他の女に可愛がってもらうことにしたのさ」
息子は年上の妾に世話になっていることを告げて、心配性の母を深く傷つけた。母は今、息子と大喧嘩をする気力をも失って、足早に家を後にした息子のいない寂しい部屋の隅で、頬杖をつくしかなかった。放心状態なのである。
夜になって、寝床に臥しているたまえの家にとみが戻って来た。二人は同居しているのである。元気のないたまえに、とみはパチンコの景品を並べて見せた。
寝床から這い出して来たたまえと、とみの会話。
「ねぇ、おきんさんたら何でしょ、あの、人を小馬鹿にしたような顔つきは。昔は私の方がずっと売れっ子だったんだわ・・・・ねぇ、何様だっていうのさ。たかが金貸しのババァじゃないの・・・・今度こそ競輪行って稼いで来るわ。競輪で稼ぎ、パチンコで稼ぎ、まだまだ稼ぐ手は沢山あるんだ」
「大変な元気。幸子さんお金でも届けてきたの?」
「ううん、あんな子、ちっとも来やしない。せっせと働いて、お金貯めてるんでしょ」
「ねぇおとみさん、清に女ができたらしいの・・・・それも、よそのお妾なんですって」
「へぇ、洒落てんじゃないのよ」
「・・・・あたし幸子さんが羨ましい、しっかりしてて。きっといいお嫁さんになるわ。あんたも早く孫でも持っておきんさんに見せてやんなさい、悔しかったら」
「おきんさんも、ああもコチコチになって貯めて、一体、幾ら位持ってるんだろう」
「さあねぇ」
「あの人も貯めてばかりいないで、少しは施しゃいいのよ。色恋一つただじゃしないって風だもの・・・」
一頻りきんの悪口を言ったとみに、たまえは問いかけた。
「おとみさん、あんたもこれからずっと一人でいく気?」
「そうよ。そのつもりよ。なのに何だかんだって、うるさくてさ、人が。たまえさん、あんただってそうでしょ。ホテルにいりゃぁ面白いことが・・・」
「何にもないわ。あたしは清のことばかり。なのにあの子ときたら・・・」
「つまんないわよ、ヤキモキしたって。それより若いつばめでも探して、自分の子代わりに可愛がってやるのよ。あたしが今眼をつけてんのはね・・・」
とみの言葉を遮って、たまえは息子のことばかり。
「ほんとに清、今夜帰って来ないのかしら・・・」
息子のことしか頭にないたまえに対して、とみは最後まできんの悪口に終始する。彼女には、遥か昔、きんの世話をした恩を仇で返されたような恨みがあるのだろう。二人の殆ど生産的でない会話の中にこそ、芸者を辞めた後の苦労多き人生の真実のさまが露呈されていた。
4 クールなしっかり娘と、だらしなく依存心の強い母
ラーメン屋でのこと。
儲けた金ですぐにとんかつを食べてしまうような、経済観念の乏しいとみは、麻雀屋に勤めている娘の幸子を職場に訪ね、金をせびっていた。テーブルの横の鏡に向かって髪を整える娘と、その鏡に自分の顔を写し鼻毛を抜く母。
このユーモラスな描写の内に、それぞれの人生の躍動感の違いがコントラストに映し出されていて、それは、「あたしも話がある」と言って、母を誘い出した娘の告白の布石にもなっていた。
「お母ちゃん、あたしね、結婚するの」と娘。
「え、結婚?」と驚く母。
「どうしても、結婚したいって言うのよ。あたしがとっても好きだって」
その相手が、店に来る少し年上の腕に職を持つ男であることを説明する娘に対して、母は自分の経験から娘が男に騙されていると信じて反対する。しかし母の本当の心根は、結婚によって経済的に頼れる対象を失う不安感にあった。
クールなしっかり娘と、だらしなく依存心の強い母の好対照ぶりは、如何にも、母に頼らず生きてきた娘の自立心を際立たせていた。珍しくうな垂れるとみの表情が滑稽ですらあった。
娘に頼れなくなったとみは、あれ程までに罵っていたきんの元に駆け込んだ。借金のためである。
とみはきんの前で、思いっ切り愛想を振り撒いた。その価値観や生活観念が何もかも異なる二人の中年女の会話には、情感的に噛み合う必然性などありようがない。その表情が醸し出す、学習的年輪の重量感の差は歴然としていた。
5 憤怒する女たち
きんの家に一通の手紙が届いたのは、借金を言い出せないとみが些か腐っているときだった。手紙の差出人の名は田部。それを知って、きんの表情は緩んだ。田部こそ、かつて惚れ合った男だったのである。
そんな上機嫌な表情のきんだったが、とみの前では決して隙を見せることがない。古い馴染みの継続力はとうに壊れていたのである。結局、とみは目的を果たせずに、無愛想な態度を置土産にして、きんの家を足早に立ち去った。
たまえが掃除婦をしている旅館に、息子の清が訪ねて来た。
彼の訪問の目的は、新しい就職先が北海道にあり、そこに単身赴任するということ。母の淡々とした意外な反応に、息子は憎まれ口を叩いた。
「良かった。俺はもっとママがびっくりするかと思ったんだ。そうだ、ママだっていいね。厄介払いができてね」
沈黙を守る母の態度に何かを察知した息子は、今度は励まそうとする。
「でもママだって、いつまでもて若かないんだから、体大事にしてね・・・北海道だって、汽車に乗ればわけないんだしさ、良かったら、今に来ておくれよ。汽車賃くらい送るよ」
掃除をしていた母の手が止まって、すかさず反応した。
「分ったよ、お前さんが悪い息子だってことを。だって、そうじゃないか。ママの知らないところで、一人前なことをちゃんちゃん(きちんきちん・筆者注)とやってのけてるんだもん。女と別れたり、就職決めたり・・・」
「金もあるんだ。北海道行きの支度金。一万円もらったんだ。ママに半分置いておくよ」
「バカ、そんなお金もらえるかい。バカ、バカ!」
母の我慢はここで切れてしまった。今や泣きながらでも、掃除の作業を続けるしかなかった。
遣り切れない思いの女がここにもいた。とみである。
彼女は金ズルを失って、のぶの店で酒を飲んでいる。そこにもう一人、遣り切れない風情の男がいた。きんのかつての心中相手であった関である。しかしとみは、その男をまだ特定できないでいた。相手が誰であっても、きんの話題に触れると、とみはその感情を抑えられないのだ。
「え、おきん?真っ平!あんな名前は酒の味が不味くなるわ。何だって言うのよ。小金を貯めたからって偉そうに、昔の朋輩見下して。この辺、自分ばかりが人間でございって顔してさ。あんな奴、どっかの犬に喰われちまえばいいのよ」
とみは自分の話し相手の関が、きんのかつての心中相手であることを、ようやく思い出した。
「あ、そうそう思い出した。おきんさん殺した人?」
「いえ、殺したんじゃありません。一緒に死んだんです。死に損なったんです・・・」
「あんたそのとき、きれいさっぱり殺しちまってくれりゃよかったのに」
「おきんに、会われたんですか?」
「そうなの。会ってね、振られてきたの」
物騒な会話が飲み屋の一角で捨てられていたが、そこでまだ捨て切れないとみは店を出て、辺りを荒れ回っていた。それを止めるのぶと、その亭主の狼狽ぶりが滑稽だった。
6 最後通告をつきつける女
一方、きんは田部からの手紙を舐めるように読んでいた。
「一度ゆっくり、会いたいと思いながら、なかなか時間がありません。二、三日中にやっと暇が作れそうなので上がります。いずれはお目にかかって・・・・」
この映像を通して、初めてきんという金貸し女が見せる、何とも言えない柔らかな喜びに溢れた表情が、そこに印象的に映し出されていた。若い頃の芸者時代の写真と、田部の写真を取り出して、それをまじまじと見るきんの顔には、恍惚感のような思いが滲み出ている。彼女は一日千秋の思いで、かつての恋人を待っているのだ。
しかし、きんの家に現われたのは、田部ではなく、関だった。
この男もまた、きんと因縁浅からぬ関係を持つ人物。その訪問の目的は分らないが、きんにとってこの男は既に過去の人物。
だから関が入ってくる早々、「何しに来たんですか?」と素っ気ない。
「俺は大いに会いたかったんだがね。どこもかしこも、昔と丸っ切り変わっちまうと、せめて昔の人にだけは会いたい、そういう気持ちになるんだがね」
「どうも、お生憎さまですいませんけど、あたし、昔のことなんて、考えたってぞっとすることばかりなんです。昔の知り合いだって、殆ど付き合ってなんて、いやしません」
男は自分の過去の不遇を嘆くばかり。それを非難されて、男は弁明する。
「・・・・いちど躓(つまづ)くと、なかなか立ち上がれないのが人間だっていうことさ」
「お互いさまよ。あたしもあんたって人に会ってからこっち、人間なんて誰も信用できないんです。上手いこと言って、皆相手を騙すばっかり。あたし、お金には汚いけど、人さま騙したことなんてないですよ。お金さえあれば、身寄りがなくたって野垂れ死にすることなんてないものね」
ここまで言われても、男には誇りがなかった。
「おきん、俺に一万円貸してくれ。一万円あったら、俺は東京をずらかって、九州から船に乗れるんだ。な、頼む、頼むよ」
男は警察に追われているのである。
「あたしがどうして、あんたにお金をあげなきゃならないんです?」
きんの冷淡な反応に、男は愕然とする。
「そんな薄情な」
「死ぬのが嫌だって言うのに、無理やり咽元に刃物を刺したのは誰なんです?女の初めの出だしの日に、ピシャリといきなり平手打ち喰らわしておいて、よくもやって来られたもんだ」
最後通告のようなきんの言葉には、女一人、厳しい世の中を渡ってきた意地と誇りがある。この描写で、きんの過去の事件が無理心中であったことが露呈された。男はもう何も反応できない。
「おきん、ごめんよ、来て悪かったね」
その言葉を残して、男はきんの家を去って行った。その寂しい後姿は、人生に敗れた者の無力感を晒していた。
7 束の間の欣喜雀躍
きんはたまえの家を訪ねた。
溜まった借金を、今度こそ返済してもらうためである。きんを迎えるたまえの表情には笑顔が満ちていた。
「すいません。長いこと延して。これで、三月分全部ありますけど」
笑顔の内に借金を返済するたまえの胸中には、何かが吹っ切れたような感情が見え隠れしていた。「いいの?」と確かめて、その金を受け取るきんに、たまえは気持ち良さそうに反応した。
「ええ、いいのよ。先のことは、また先の風が吹くから」
まもなく、息子を失うことになるたまえにとって、きんに対する債務感情をも払拭したかったのだろうか。未来の見えない中年女にも、自分の人生にそれなりの区切りをつけていく覚悟があるようにも見える。その辺が、その日暮らしのとみと決定的に異なるところなのだろう。
きんがたまえの家で寛いでいるとき、とみの娘の幸子がやって来た。
勝手に結婚を決め、生活場所まで確保した若い娘は、母が同居するその家に戻って来たのである。自分の荷物を取りに来たのだ。そのドライさは、いつの時代にも存在するだろう若者たちの共通した生態であるとも言えようか。
田部がきんの家を訪ねて来た。
欣喜雀躍(きんきじゃくやく)するようなきんの表情が、軽やかなメロディにのって印象的に映し出されている。田部を茶の間に待たせて、隣室で化粧をするきんの表情には、若い娘が胸をときめかせたような横溢した感情が零れ出していた。
「あ、嫌!まあ、そこに座ってらっしゃいよ。女には女の仕度があるんですもの」
障子を開けて覗き見する田部に対する、きんの反応の燥ぎぶり。それは、これまで抑えていた中年女の感情の噴き上げを見せていて、まるで映像のクライマックスを示唆するような描写だった。
小さな卓袱台(ちゃぶだい)を囲んで、男と女が向かい合っている。
既に中年の盛りを超える年齢に達しているとは言え、かつて愛し合った男女が、その関係を遮蔽する何ものもない夜のしじまの中に、そこだけが照明光で照らされるようにして向かい合っているのだ。しかし男の口から出る言葉は世俗的で、不景気な話ばかり。少しうんざりしたように、きんは立ち上がり、縁側の硝子戸を閉めに行った。
「怒ったの?折角、会いに来たのに、つい愚痴が出ちゃうんだよ。危ない綱渡りのような暮らし続けていると・・・」
「田部さん、あなたって、そんな弱音を吐く方じゃなかったでしょ?おきんがそんな哀れに見えるんですか?だから同情して下さるのかしら。子供もない、男もない、あんな女の子と二人暮しで。でもね田部さん、昔の連中に会うと、口じゃ羨ましそうなこと言ったって、実は心の中で舌を出しているのが、あたしには手に取るように分るんですもの。子供も男も、いずれは女の傍から消えてなくなるものじゃありませんか。自分だけよ、後に残るのは。あたしがあなたに会って、こんなに喜んでるのだって、あなたがたまに会う方だからなんですわ。もうね、散々男のご機嫌とってきて、今更、朝から晩まで男と一緒に暮らすなんて、やなこった」
きんの中で、何かが一気に壊れていった。
壊れたものは、もしかしたら自分の中で殆ど失っていた、ときめきの感覚を蘇生させてくれるかも知れないという淡い思いである。その思いを壊した者が、まだ自分の眼の前にいて酒を飲んでいた。
きんのモノローグ。
「この人は何しに来たのかしら。昔のように燃えてる気持ちが何にもありゃしない。こんなつもりじゃなかったんだわ。関みたいな男に付きまとわれて、逃げたい一心で縋っていた人。戦争前で、まだ金ボタンの学生だった。広島へ兵隊でとられた時、何遍訪ねて行ったろう。あの頃はあたしも一筋になれたんだけど・・・」
男の前で三味線を弾くきん。しかし、そのモノローグはあまりに空しい。
「こうやっていると昔と同じような格好だけど、もうあたしたちの間に何にもありゃしない。灼きつくような二人の恋も、今になってみると、何の跡も残っちゃいないんだわ」
酩酊状態になって、男は遂に本音を吐き出した。
「ねえ、二十万円くらい何とかならない?」
男の目的は女としてのきんではなく、金貸しとしてのきんとの再会だった。
「ふん、やっぱり金が目当てで来たんじゃないの。昔の女に頭を下げて、ああ、みっともない。うっかり酔ってなんかいられないわ」
きんは心の中で、既に自己防御の体制に入っている。
「田部さん、あんた変わったわね」ときん。
「どんな風に?」と田部。
「とっても平凡になっちゃった」ときん。
「へえ、平凡にねぇ、それが人間なのさ」と田部。
「ねえ、電車大丈夫?」ときん。彼女は男を早く追い出したいのである。
「もう帰らないよ。こんな酔っ払い、追い出すのか・・・・」と田部。
男はもうきんの家で泊まるつもりでいる。彼はまだ金策の目的を果たしていないのだ。そんな男がトイレに行っている間、きんは男の若かりし頃の写真を火鉢で燃やしてしまった。きんにとって、もう過去の甘美な思い出は、消滅させるべき何かでしかなかったのである。
金を求めた男が、それを拾えなかった場所で酩酊の夜を過ごし、かつて恋を失った女が、それを拾えなかった場所で鬱憤の夜を過ごしていく。
その辺の描写を描いた林芙美子の原作には、こう書かれていた。
「長い年月に晒されたと云う事が、複雑な感情をお互いの胸の中にたたみこんでしまった。昔のあのなつかしさはもう二度と再び戻って来ないほど、二人とも並行して年を取って来たのだ。二人は黙ったまま現在を比較しあっている。幻滅の輪の中に沈み込んでしまっている。二人は複雑な疲れ方で逢っているのだ。小説的な偶然はこの現実にはみじんもない。小説の方がはるかに甘いかも知れない。微妙な人生の真実。二人はお互いをここまで拒絶しあう為に逢っているに過ぎない」(「晩菊」林芙美子集 新潮日本文学 より)
8 円環的な日常世界を繋ぐ女
二人の女が酒を酌み交わしている。たまえととみである。
息子を北海道に送る前夜のこと。二人はしみじみと語り合っているが、その内実はお互いの寂しさを癒し合うもの。
「でもおとみさん、どんなに苦しい思いしてきても、子供は産んでおいて良かったね」
「そりゃそうよ。あたしなんかね、死んじまいたいと思ったこと何度あるか知れないけどさ、やっぱり子供が可愛くて生きてきたんだ」
「子供のために乾杯・・・・」と二人で杯を合わせた。
それでもたまえには、なお遣り切れないものが残っている。
「その子、もうすぐ北海道へ」
「しつっこいね、あんたも。今まで退屈させないでくれただけでも、有り難いと思いなさいよ」
たまえの息子に対する未練は、酒を飲むくらいでは当然断ち切れない。娘を失ったとみは酒を飲み、歌を歌うことで、少しでも何かを晴らせている。二人の性格の違いが際立つ場面だった。「女の幸せとは何か」という重いテーマを、成瀬はいつも分りやすい描写で観る者に突きつけてくるのだ。
翌日、その目的を果たせずに田部は帰って行った。
入れ替わるように、板谷がきんの家を商談のために訪れている。柱時計の時刻は、11時25分を指していた。ファーストシーンと、ラストシーン近くの描写が重なったのである。きんの日常は、その間、殆ど大きな変化がなかった。始めがあって、終わりがある。
因みに、成瀬的映像宇宙の、その日常が円環的に流れていることを指摘したのは、「映画学」の専門的研究者であるスザンネ・シェアマンだった。(「成瀬巳喜男 日常のきらめき」キネマ旬報社刊)
9 別離の後のモンローウォーク
ラストシーン。
ここでは、この映像の主要な登場人物である三人の中年女性の、それぞれの時間を区切っていく印象的な描写によって、完結に至るさまが綴られていく。
彼女たちのこの一日は、既に失った女(とみ)と、今これから失っていく女(たまえ)、そして、今朝失ったばかりの女(きん)の別離の後に開かれていく、新たな日常性へのリスタートの様子が、恰も、「それでも人生は続く」という、特に変哲のない日常的な描写によって淡々と括られていくのだ。
たまえととみは、一時間後に北海道へ出発する清と共に喫茶室に居た。ただそこに居て、時間を待つだけの清に対して、母のたまえは未だ整理つかない自分の感情に翻弄されている。
「ねえ、清、もしママに何か変わったことがあっても、帰って来ないでいいよ。ママのことだから、カァッとなって急に死にたくなることがあるかも知れないけど、いいよ、帰って来なくて・・・」
息子に励まされて、ようやく腰を上げる母。映像は、息子と母の別離をこの描写だけに留めている。次のカットは、清を送った二人の中年女が陸橋で列車を見下ろすシーン。
「心配ないよ、若い者はうまくやっていくよ」ととみ。
「うん、あたしたちもしっかりしなくっちゃね」とたまえ。その声には、一貫して張りがない。
何とも言えない、未知なる寂しさの中での二人の会話。
その二人の前に、一人の若い女性がモンローウォークで通り過ぎていく。
それを見たとみは、「あたしにだってできるよ」と言って、白昼の往来をモンローウォークでのパフォーマンス。元気のないたまえを励まそうとするとみの滑稽な仕草に、たまえはその表情を緩めた。二人の間に笑いが戻った瞬間だった。それは別離の辛さから、そのうち解放されていくであろう二人の、決して明るいとは言えない未来への繋がりを僅かに保持する表情でもあった。
10 「喰うか喰われるかって言うのは男だけの台詞じゃないわ」
一方きんは、板谷を伴って、とある駅に降り立った。
板谷の情報がもたらした新たな不動産の物件を見るために、自宅を後にしてきたのである。田部を送り返した後のきんの心には、今やビジネスのことしか入り込む余地がないかのようだった。ここには、別離を引き摺らない女の意地が眩しいまでに輝いていた。
物語への言及の最後に、きんの言葉を紹介しておく。
それは、この日、慌てるように訪ねて来たのぶの報告に反応したときの言葉である。のぶはきんに、関が警察に逮捕されたことを告げたのである。そのとき、きんはきっぱりと言い放ったのだ。
「あたしゃね、関さんなんて人が刑務所に入ろうと、首を括ろうと、そんなことに構っちゃいられないのよ。男なんて誰も彼も、皆女の生き血を吸って生きてるんだもの。ちっとも隙を見せられない。喰うか喰われるかって言うのは男だけの台詞じゃないわ」
映像を括るに相応しい、一人の中年女の極めてインパクトの強い表現が、私には強烈な印象を残すものになった。
* * * *
11 それでも女は生きていく
高度成長以前のこの国にあって、手に職を持つ機会すら少なかった女性たちが、なお自立していかねばならない環境下に置かれたとき、その自我の拠って立つ安定的な基盤を一体どこに求めたらいいのか、という重くて切実なテーマが、映像全体を通して滑稽と悲哀に満ちた筆致で問いかけられている。そこに映し出されたあまりに写実的な人生模様が、観る者によっては大いなる共感であったり、或いは、嫌悪感であったりというような複雑な反応を醸し出す何か、それがこの作品にはあった。
主要な登場人物は、三人の中年女。
彼女たちに共通しているのは元芸者で、現在は亭主を持たない女所帯であること。
この三人はそれぞれ異なった執着心の対象を持っている。きんは「金」であり、たまえは「息子」であり、とみは、「娘」ないし、「ギャンブル=遊び金」である。
それらが彼女たちの、リアルタイム下に於けるそれぞれの自我の拠って立つ安定の基盤のように思えるが、たまえととみに関しては、その拠って立つものの揺らぎの描写に終始していて、その漂流のさまが何とも言えない遣る瀬なさに充ちていた。
共に自立心が稀薄で、依存性の強い性格が、瑣末なエピソード描写の内に残酷なほど炙り出されていて、しばしば目を背けたくなるが、それにも関わらず、諧謔性に満ちたリアルなさまに引き摺り込まれてしまうのは、そこに一切の奇麗事な描写が徹底的に排除されているからに他ならない。
自然な演出と自然な演技の表現的結合が、そこに見事な映像的達成を具現したのである。等身大の宇宙の創作的な展開で勝負する映像作家の、その真骨頂を見る思いがする。
一方、きんについての描写は他の二人より遥かにシビアで、精緻なものがある。
彼女は最も自立心の強い女だが、しかしその背景には、そのように生きていかねばならなかった絶対環境が横臥(おうが)しているのである。
それはプロットの繋がりの中で理解されるが、それでも、ここまで他人を信じられなくなるような人間性に反感を覚える者も多いだろう。然るに、敗戦の苛酷な状況下で、一介の元芸者がその身過ぎ世過ぎを確保するには、一体、どのような処世術が可能だったのか。
男に捨てられたり、騙されたり、無理心中の片割れにされそうになった女が、もう男に頼らないで生きていこうとしたとき、彼女は体を売ることなく、その才覚で未来の扉を開くしかないだろう。
きんはそれを成し遂げたのである。
敗戦から間もないこの国が均しく貧しかった時代に、女たちはその拠って立つ自我の安定の基盤をどこに求めたのだろうか。
恐らく家庭を作り、子供を育て、厳しい生計を遣り繰りしながら、その細(ささ)やかな小宇宙に情愛の対象を求めていくことであったのか。
この頃、女が自立して生きていくのは極めて困難な時代であったから、大抵は、家庭という宇宙で自我を自己完結するラインに幸福を見出したに違いない。
ところが、この映画の登場人物にはそのような宇宙が全くないか、仮にそれがあっても、とうに崩れかけている環境下で、中年以降の人生を拓かねばならない運命を負って日々を過ごしている。
それぞれ再婚して新しい家庭を持つ可能性はあるが、映像はそれについて楽観的な描写を提出することはない。
きんのようにほぼ確信的に覚悟を括って男を断ち、その才覚と現実感覚によって、まもなくやって来るであろう、高度成長の時代と上手に繋がっていく可能性をふんだんに持つ、頼もしい自立心があれば何の問題もないが、それでも彼女の中で、「金」だけで人生の至福に逢着する未来像が確保されているかどうかについては不分明である。彼女もまた、中年女性に残された孤独な時間との折り合いが、常に見えない部分で切実なテーマになっていくに違いないのだ。
きんの比較的安定的な人生軌道と対極にある、たまえととみ。
依存性の強い彼女たちに再婚し、家庭的生活をリスタートする可能性はないとは言えないが、少なくとも、とみのような杜撰で刹那的な性格の持ち主が、幸福な晩年を送れる確率は高いと言えないだろう。
才覚もなく、手に職を持たない彼女たちは、実子に見放されてしまったら、何か堅気のパートのような仕事で、相変わらず生活を繋いでいくしかないのであろうか。
自分たちの思いをある程度汲み取って、依存するに足る何者かと繋がれなかったとき、二人の余生は、決して希望に満ちた軌道を作り上げていくのは困難であるような気がするのだ。
この映像は、かくも厳しいテーマを内包していて、あまりに切実である。
そんな切実なテーマを深刻ぶって描くことなく、どこまでも成瀬らしく淡々と、市井の其処彼処に垣間見える人生模様を、丸ごとそのまま切り取ったような自然さで括り切った秀作、それが「晩菊」だった。
もう一度、私なりにその主題を要約すると、こういう文脈になるだろう。
「亭主(男)を持たない中年女性がそのリスタートに於いて、その自我を安定させるに足る、拠って立つ何かを持ち得るか、或いは、いかにそれを継続的に保障し得るか、そのためにはどうあるべきか、どうすべきなのか」
それでも人は生きていく。
とりあえず、今死んだら困るから生きていく。死ぬに足るだけの理由がないから生きていく。時代の、眼に見えない移ろいの中で生きていく。
それでも女は生きていく。盛りを過ぎても生きていく。男なしでも生きていく。思うようにならない人生を生きていく。
始まりがあって、終りがある。
そこに取るに足らないことしか起こらなくても、円環的な日常性を巡って、巡って、巡り抜いて、それでもそこにしか辿り着かない時間の海を漂流するようにして、一時(いっとき)の心地良さと出会うために生きていく。
人生は所詮、なるようにしかならないのだ。
運命の悪戯もあれば、際どい分岐点もある。
どれほど努めても、何ものにも結晶化できないこともある。何もしなくても、向こうから天使が誘(いざな)ってくれるときもある。
一切は幻想かも知れないし、何事も不定形な観念の饒舌なる遊戯かもしれないのだ。
それが偶然だったか、それとも必然だったか、実は誰も定められないし、そこに残された固有の思いだけが、その軌道の評価を括っていくだけなのである。
それでも人は生きていく。
それだからこそ、人は生きていく。定まっているようで、定まらない人生の悪戯を信じることができるから生きていく。
くどいようだが、なお書いていく。
モンローウォークの向こうに何があるか分らないけど、それでも彼女たちは生きていくのだ。
「晩菊」とは、遅咲きの菊のことである。
このタイトルと映像の内実の落差に失笑を禁じ得ないが、モンローウォークで括った映像の、ほんの一歩突き抜けた律動には、「思うようにならない人生」を生きていく女の哀切なる余情は微塵もない。それでも女は生きていくからである。
(2006年3月)
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